ASDと人間関係のトラブル

この記事の内容

自閉症スペクトラム障害(ASD)の人は、その特性ゆえに人間関係の困難に直面しがちです。

この記事では、人間関係を築きにくいASDの特性について、簡単に説明します。

人間関係を難しくする3つの特性

コミュニケーションの障害

ASDの人は、一般的に「相互的なやり取り」が苦手です。

たとえば雑談をする場合、ASDの人は自分の興味・関心があることだけを一方的に話しがちです。

そして、相手の言うことは無視してしまうため、どうしても会話が成り立ちません。

「空気を読んでとりあえず話を合わせる」ことができないわけです。

また、話し相手の表情や反応を読み取ることも苦手であり、その場の空気を読むことが苦手です。

「今これを言ったら場がしらけるだろうな」とか「この発言はこの場にそぐわないだろうな」とかは考えず、思ったことをそのまま口にしてしまいます。

そして、そのようなことを繰り返すうち、周囲の人たちから避けられ相手にされなくなってしまいます。

社会性の欠如

ASDの人は、仲間内のルールや職場内のルールよりも自分のルールを優先しがちです。

また、一般的に、周囲の状況を気にして自分のルールを決めるようなこともありません。

これは、他人に対しての関心や仲間意識がとても低いためで、ASDの特性のひとつです。

そして、自分のルールを優先して行動するため、当然ながら周囲と摩擦が生じます。

たとえば職場では、周囲がいくら忙しくしていようが、自分の仕事が終わればさっさと帰ってしまいます。

「帰りづらいな…手伝った方がいいかな…」とは考えません。

よって、「自分勝手でわがままな人」というレッテルを貼られてしまいがちです。

ただ、本人としては、「やるべき仕事をやり、帰るべき時間になったから帰っただけ」であり、なぜそう思われるのか不思議でなりません。

興味・活動の限定

これは、一言でいえば「こだわり」のことです。

ASDの人は、一般的に、自分のルールに忠実に行動する(こだわりがある)傾向があります。

そのため、マイルールが通用しなくなる突然の予定変更に対する弱さがあります。

また、対人関係については、マイルールへのこだわりが強く融通が利かないため、親しい関係が長続きしない傾向にあるようです。

大きな苦しみ

ASDの人のなかには、他人とのかかわりを好まず、一人で過ごすことを好む人も多くいます。

しかし、ASDだからといって、みんながみんな一人を好むわけではありません。

なかには、他人とかかわりたい、周囲と仲良くやっていきたいと考える人もいるでしょう。

そのような人にとって、ASDの特性によって良好な対人関係を築けないことは、大きな苦しみであろうと思います。

発達障害の苦悩

最も多い苦悩は、周囲と違う自分の存在の感覚、就職難をふくむ生活の困難、対人関係の挫折などに関連する、切実な不安・絶望感である。自分が皆と違う人間で、皆に避けられ、家族に迷惑をかけ、将来の見通しが立たない悩みを語るうちに、しばしば真剣な希死念慮が訴えられる。

山下格・大森哲郎(補訂)(2022).精神医学ハンドブック[第8版] 日本評論社 p.234.

参考図書

『ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LD 大人の発達障害 日常生活編 18歳以上の心と問題行動をサポートする本』宮尾益知/監修 河出書房新社

『精神医学ハンドブック 医学・保健・福祉の基礎知識 第8版』山下格/著 大森哲郎/補訂 日本評論社

参考リンク

この記事を書いた人

群馬県前橋市の精神保健福祉士・社労士 鈴木雅人
精神保健福祉士・社会保険労務士
鈴木雅人
氏名鈴木 雅人(すずき まさと)
生年月日1980年(昭和55年)4月1日
国家資格社会保険労務士 第10230004号
精神保健福祉士 第26879号
加入団体群馬県社会保険労務士会
群馬県精神保健福祉士会
群馬県精神保健福祉協会
家族妻と長男
出身地 群馬県前橋市
学歴東海大学体育学部中退
文教大学人間科学部卒業
座右の銘人間万事塞翁が馬

事務所概要

事務所名若宮社会保険労務士事務所
代表者鈴木雅人
所在地群馬県前橋市日吉町4-14-7
電話番号080-7712-2518
メールinfo@wakamiya-sr.com
定休日不定休