大人の発達障害の特性
この記事の内容
大人の発達障害によるトラブルの原因は、その特性ゆえに「大人の常識」が通じないことにあるようです。
そのような大人の発達障害の特性について、簡単にご紹介します。
暗黙の了解がわからない(ASD)
自然に理解できない
社会には様々なルールがあり、また、家庭や学校や会社などには、その場所に特有のルール(暗黙の了解)が存在します。
多くの人々はそれを経験から学び、あるいは察し、自然と理解していきます。
しかし、自閉症スペクトラム障害(ASD)の人の多くは、目に見えない社会の常識(ルール、暗黙の了解)を自然に理解することが苦手です。
社会に出ると通用しない
暗黙の了解を自然に理解することが苦手でも、学校や家庭内であれば、大目に見てもらえたかもしれません。
しかし、一旦社会に出てしまうと、そうはいきません。「大人の常識」が求められます。
たとえば職場であれば、各職場によって仕事の進め方が異なり、人によって仕事の教え方が異なり、言葉遣い、電話のとり方、許容される服装や化粧が異なります。
多くの人は最初こそ戸惑うかもしれませんが、すぐに馴染んでいきます。「郷に入っては郷に従え」を自然と行うことができるのです。
しかし、ASDの人は、こうしたことに臨機応変に対応することができない傾向があります。
そのため、融通の利かない変わった人として、周囲とトラブルになったり距離を置かれてしまったりするのです。
自分のルールにこだわる
ASDの人は、一般的に、周囲に関係なく自分のルールにこだわって行動します。
たとえ状況にそぐわない行動でも、本人が正しいと思えば、それをやめさせることは困難です。
さらに、そのルールを他人に押し付けることもあり、ときに迷惑がられ、対人トラブルに発展することもあります。
不注意と衝動性(ADHD)
注意欠如多動症(ADHD)には、「不注意」、「衝動性」、「多動性」という特性があります。
特性の現れ方は人それぞれで、多動性は大人になるにつれ目立たなくなるようですが、不注意や衝動性といった特性によって社会人生活が困難になってしまう人もいます。
たとえば、衝動性の特性が強い人は思い付きで行動してしまうため、仕事を途中で投げ出して離席してしまうかもしれません。
また、不注意の特性により「大事な約束を忘れる」、「遅刻が多い」、「大切な書類を紛失してしまう」等のミスを繰り返す人もいます。
あるいは、「片付けが苦手でデスクの上がいつもぐちゃぐちゃになっている」、「落ち着きがなく事務仕事に集中できない」、「細かな確認作業が苦手でミスばかりしている」という人もいるでしょう。
このようなことを繰り返していると、何度も叱責され、職場での評価は下がり、居づらくなってしまい、心身に不調をきたし、退職せざるを得ないということにもなります。
大人の発達障害の特性
大人の発達障害にありがちな特性について列挙します。
あまりに多くあてはまるようであり、自分自身が困っていれば、精神科や心療内科を受診して発達障害の検査を受けるのもよいかもしれません。
空気が読めない
- その場の雰囲気を読むことが苦手
- 相手の表情の変化に気がつかないことがある
- 話題を合わせられない
- 人に合わせて行動できない
- 常に自分の予定を優先する
- 自分は悪くないのに突然怒られたことがある
- スポーツ観戦などで一緒に応援する意味が分からない
- 行先によって服装を変えることがない
- テレビや映画で泣いたことがない
会話が続かない
- 子供の頃から友人たちとの会話がうまくいかない
- 何人かで会話をしていても、いつの間にか自分だけ浮いてしまう
- 話の流れが理解できない
- 相手の顔を見てしまうと、目や口が気になって話の内容が分からなくなる
- 話しだすと止まらない
- 人の話を聞こうとしない
- 相手によって言葉の使い分けができない(敬語など)
- すぐに仕切りたがる
- 興味のない話に加われない
- 話題が変わったことに気づかない
- 話したいことを整理できず、唐突な話をしてしまう
約束が守れない
- 内緒話を人に話してしまう
- 「ここだけの話」と言われると困ってしまう
- 余計な一言が多いと言われる
- よく約束を忘れる
- よく遅刻をする
- 時間にルーズと言われる
- 何事も取りかかるのが遅いと言われる
- 段取りが苦手
- 1日の予定を消化できないことがよくある
- 電車やバスが時間通りに来ないと自宅に戻ってしまう
パニックを起こしやすい
- ルールをしっかり守る
- 他人の失敗を許せない
- 白黒はっきりさせないと気が済まない
- 大声で話されるのが苦手
- ちょっとしたことでも驚く
- 音や照明に敏感
- 大声や奇声をあげることがある
- いつも自分の評価が低いと感じる
- 過去の嫌なことをよく思い出す
次にやることがわからない
- 指示待ち人間だと言われる
- 「自分で考えろ」と言われても困る
- 「ちょっと手伝って」の意味が分からない
- 協調性がないと言われる
- 人のことに関心がない
- 好きなことは何時間でもできる
- 物事がスケジュール通りに進むと安心する
- 怠けていないのにいつも怒られる
- 苦手なことは絶対にやりたくない
同じ過ちを何度も繰り返す
- 同じミスを何度もする
- 遅刻が多い
- 毎朝起きられない
- 物忘れが多い
- 集中力がないと言われる
- 電話を聞きながらメモを取れない
- 字が汚いと言われ、何度も書き直しをされる
- 不潔っぽいと注意される
- 反抗的と言われる
体調不良を繰り返す
- 思春期から成人期にかけ、「自分はどこか他の人と違う」と感じるようになった
- 思春期頃から体調不良を繰り返すようになった
- 職場でいじめられ、何度も転職した
- 周りが自分の悪口ばかり言っているように感じる
- 落ち込むと考え過ぎて眠れない
- 自分はダメな人間だと思う
- 家族も自分を理解していないように感じる
- 何もする気が起きない日が何日も続く
- 何日も部屋から外に出ないことがある
異性との接し方がわからない、恋人ができない
- 友達と恋人の境界が理解できない
- 異性の言葉をそのまま信じやすい
- 声を掛けられると嬉しくて複数の異性と付き合った
- 突然に性的な話をして相手を困らせた
- 自分の言いたいことばかり話してしまう
- 自分の趣味の話をしただけなのに無視された
- メールではいろいろいえるのに、会うと怒らせてしまう
- 長いメールを毎日送って怖がられた
- 「女性らしさ」や「男性らしさ」がわからない
- 異性に興味がない
金銭トラブルに巻き込まれやすい
- 「お金を貸して」と言われると断れない
- 買い物の際、店員に勧められるままに買ってしまう
- アンケートなどの勧誘をされると断れない
- よく考えずに衝動買いをしてしまう
- 同じものをいくつも買ってしまう
片付けられない
- 掃除が苦手
- 片付ける意味が分からない
- いつも部屋の中が汚れている
- デスクの上がいつも汚れている
- カバンの中がぐちゃぐちゃ
- どこから掃除や片付けをすればよいのか分からない
- 服を何日も着替えないことがある
- 爪や髪など身だしなみを気にしない
- 自分なりの整理の仕方にこだわりがある
発達障害の苦悩
最も多い苦悩は、周囲と違う自分の存在の感覚、就職難をふくむ生活の困難、対人関係の挫折などに関連する、切実な不安・絶望感である。自分が皆と違う人間で、皆に避けられ、家族に迷惑をかけ、将来の見通しが立たない悩みを語るうちに、しばしば真剣な希死念慮が訴えられる。
山下格・大森哲郎(補訂)(2022).精神医学ハンドブック[第8版] 日本評論社 p.234.
参考図書
『ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LD 大人の発達障害 日常生活編 18歳以上の心と問題行動をサポートする本』宮尾益知/監修 河出書房新社
『精神医学ハンドブック 医学・保健・福祉の基礎知識 第8版』山下格/著 大森哲郎/補訂 日本評論社
参考リンク
政府広報オンライン
🔗大人になって気づく発達障害 ひとりで悩まず専門相談窓口に相談を! | 政府広報オンライン (gov-online.go.jp)
国が運営するポータルサイト
就労支援
🔗発達障害者の就労支援 |厚生労働省 (mhlw.go.jp)
全国の発達障害者支援センターの一覧
🔗発達障害者支援センター・一覧 | 国立障害者リハビリテーションセンター (rehab.go.jp)
国立障害者リハビリテーションセンター
法律
この記事を書いた人
氏名 | 鈴木 雅人(すずき まさと) |
生年月日 | 1980年(昭和55年)4月1日 |
国家資格 | 社会保険労務士 第10230004号 精神保健福祉士 第26879号 |
加入団体 | 群馬県社会保険労務士会 群馬県精神保健福祉士会 群馬県精神保健福祉協会 |
家族 | 妻と長男 |
出身地 | 群馬県前橋市 |
学歴 | 東海大学体育学部中退 文教大学人間科学部卒業 |
座右の銘 | 人間万事塞翁が馬 |
事務所概要
事務所名 | 若宮社会保険労務士事務所 |
代表者 | 鈴木雅人 |
所在地 | 群馬県前橋市日吉町4-14-7 |
電話番号 | 080-7712-2518 |
メール | info@wakamiya-sr.com |
定休日 | 不定休 |