ADHDの代表的トラブル

この記事の内容

大人のADHDの人は、集中力が持続せずに仕事上のトラブルが多くなる傾向があります。

たとえば、「思いついたら即行動」といったような衝動性の特性により、次のようなトラブルが生じ得ます。

  • 周囲と相談せず、自分一人で突っ走る
  • 他に興味が移ると、すぐに投げ出す
  • いい加減で自分勝手な人と評価されてしまう

また、特に女性の場合、その特性が人間関係等のトラブルに発展することが多くなりがちです。

それはたとえば、次のようなことです。

  • 友人の秘密をつい別の人にしゃべってしまう
  • 会話にむりやり割り込み、不評を買ってしまう。
  • 結婚しても家事ができない
  • 感情をコントロールできず、子育てに悩む

この記事では、このような「ADHDの代表的なトラブル」と「サポートのポイント」について、簡単に記載します。

なお、代表的トラブルは次の4つです。

  1. 約束が守れない
  2. 片付けが苦手
  3. 毎日の家事が苦手
  4. 金銭管理が苦手

発達障害の苦悩

最も多い苦悩は、周囲と違う自分の存在の感覚、就職難をふくむ生活の困難、対人関係の挫折などに関連する、切実な不安・絶望感である。自分が皆と違う人間で、皆に避けられ、家族に迷惑をかけ、将来の見通しが立たない悩みを語るうちに、しばしば真剣な希死念慮が訴えられる。

山下格・大森哲郎(補訂)(2022).精神医学ハンドブック[第8版] 日本評論社 p.234.

約束が守れない

ADHDの人は、仕事でもプライベートでも優先順位をつけることが苦手です。

そのため、約束の期限を守れなかったり、遅刻が多かったりします。

そして、そのようなことを繰り返すうち、周囲からの評価も低くなっていきます。

約束の時間が守れない

ADHDの人は、計画を立てることが苦手な傾向にあります。

約束の時間ギリギリまで他のことをしてしまい、しばしば遅刻します。

取りかかるのが遅い

ADHDの人は、見込みが甘く、重要なことも後回しにしてしまいがちです。

それで痛い思いをしても、同じような失敗を何度も繰り返します。

段取りがつけられない

ADHDの人は、やるべきことの優先順位をつけることが苦手です。

また、手順を考えて物事に取り組むことも苦手とします。

用事を詰め込み過ぎる

ADHDの人は、あれもこれもと用事を詰め込み過ぎ、結果的に全部をこなすことができません。

サポートのポイント

  • 一度に多くのことをやらせようとしない
  • 毎日同じような行動スケジュールにする
  • 集中力が持続しない傾向にあるため、こまめに休憩を挟む
  • 仕事の進捗を常に確認し、遅れていれば周囲がフォローする
  • やるべきことの優先順位を教える
  • 指示は口頭で伝えるだけでなく、文字にして伝えるようにする
  • 行動をルール化する(「出かける●分前になったら別のことをやり始めない」など)

片付けが苦手

ADHDの人は、片付けが苦手な傾向があります。

職場のデスクはぐちゃぐちゃ、自分の部屋もぐちゃぐちゃという人も珍しくないでしょう。

片付けようと思っていても、どこから手を付ければよいのかわかりません。

計画を立てられず、だらしない人と思われがちです。

「自分はダメな人間だ」と劣等感を抱えている場合もあります。

やるべきことをすぐに忘れてしまう

ADHDの人は、視界に入ったものや頭に浮かんだことに気を取られ、やるべきことをすぐに忘れてしまう傾向があります。

片付けようと思っても、他のことに気を取られてなかなか取りかかれません。

一つのことに集中できない

ADHDの人は、次から次に興味関心の対象が移ってしまい、集中力が持続しない傾向があります。

たとえば、部屋の片付けの最中にゲームが出てくると、そのゲームを始めてしまうなどです。

決めごとを守るのが苦手

ADHDの人は、決めごとを忘れてしまい、すべてが中途半端になってしまいがちです。

物を決められた場所に戻すという決めごとが守れず、片付けができません。

スケジュールが立てられない

ADHDの人は、優先順位がつけられず、見通しを立てられず、スケジュールを立てることが苦手です。

掃除や片付けを計画的に進めようと思っても、興味の対象が次々に移ってしまいます。

サポートのポイント

  • あらかじめ掃除や片付けの日を決め、カレンダーに書き込むなど確認できるようにしておく
  • 一つ一つの作業を短時間で終わらせるようにする
  • タイマーを活用し、作業の途中でも一旦終了とする
  • 終わらなかった作業は次回に持ち越す等のルールを決めておく
  • 決めたルールを毎日繰り返し、クセづけをする

毎日の家事が苦手

日本には、未だに「女性は家事ができて当たりまえ」という良妻賢母的な価値観が根強く残っています。

ただ、ADHDの女性には、毎日の家事が苦手という人も多いようです。

家事が苦手なことで自分を責め、あるいは夫や家族から責められて自信を無くし、うつ状態になってしまう人もいます。

モチベーションが持続しない

ADHDの人は、目新しいことに飛びつく積極性がある一方、単純作業の繰り返しを苦手とします。

家事は、基本的には同じことの繰り返しであり、モチベーションを保ちづらくなります。

日常生活がストレス

同じ家事を毎日繰り返すコツは、程よい「適当さ」です。

ADHDの人は、上手く手を抜くことが苦手な傾向があるため、ストレスを感じやすくなります。

日によって波がある

ADHDの人は、毎日同じリズムを保つことが苦手な傾向にあります。

朝から精力的に家事をこなす日もあれば、その翌日は疲れて丸一日何もせずに過ごす等、落ち着きのないジェットコースターのような日々になりがちです。

苦手なことを先延ばしにする

ADHDの人は、苦手なことや嫌いなことを先延ばしにする傾向があります。

たとえば、掃除等の苦手な家事を先延ばしにし続けることにより、「だらしのない人」と思われてしまうことがあります。

サポートのポイント

  • 家族(夫)と家事を分担する
  • 家族と家事のスケジュール表をつくり、見えるところに貼る
  • 誰が何をやるかのルールをつくる
  • 家族みんなで一緒に家事をする
  • 献立は家族が一緒に考える
  • 家族と一週間分の献立表をつくる
  • インスタント食品を活用する
  • 家事をまったくやらない日(休日)をつくる

金銭管理が苦手

ADHDの人は、衝動性や不注意の特性から、計画的な行動や金銭管理が苦手です。

そのため、お金に関しても、あればあっただけ使ってしまいがちです。

衝動買い

ADHDの人は、感情コントロールを苦手とします。

そのため、衝動買いが多くなる傾向があります。

また、以前に買ったことを忘れてしまい、同じものを何個も買ってしまうようなこともあります。

浪費グセが治らない

お金がなくても、ついつい買ってしまいます。

クレジットカードの限度額いっぱいまで使ったり、多重債務の状態に陥る人もいます。

滞納を繰り返す

公共料金の支払いを後回しにしたり、忘れたりします。

一度痛い思いをしても、すぐに忘れて何度も繰り返します。

契約書を読まずにサインする

契約内容をよく確認せずに無理なローンを組んだりします。

借金に借金を重ね、自己破産に陥る人もいます。

サポートのポイント

  • 現金は必要な分だけ持ち歩くようにする
  • ATMで一度に引き出す金額を決めておく
  • クレジットカードを使用せず、必ず現金払いとする
  • 衝動的に買いたいと思うものがあっても、当日には絶対に買わないようにする
  • 契約書等に署名する際は、必ず家族や親しい人に確認してもらう

おわりに

ADHDのトラブルは、「衝動性」と「不注意」の特性によるものがほとんどです。

トラブルの傾向を知り、有効な対策を考えておきたいものですね。

参考図書

『ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LD 大人の発達障害 日常生活編 18歳以上の心と問題行動をサポートする本』宮尾益知/監修 河出書房新社

『精神医学ハンドブック 医学・保健・福祉の基礎知識 第8版』山下格/著 大森哲郎/補訂 日本評論社

参考リンク

この記事を書いた人

群馬県前橋市の精神保健福祉士・社労士 鈴木雅人
精神保健福祉士・社会保険労務士
鈴木雅人
氏名鈴木 雅人(すずき まさと)
生年月日1980年(昭和55年)4月1日
国家資格社会保険労務士 第10230004号
精神保健福祉士 第26879号
加入団体群馬県社会保険労務士会
群馬県精神保健福祉士会
群馬県精神保健福祉協会
家族妻と長男
出身地 群馬県前橋市
学歴東海大学体育学部中退
文教大学人間科学部卒業
座右の銘人間万事塞翁が馬

事務所概要

事務所名若宮社会保険労務士事務所
代表者鈴木雅人
所在地群馬県前橋市日吉町4-14-7
電話番号080-7712-2518
メールinfo@wakamiya-sr.com
定休日不定休